mixture-art@Q
技術+アイディア+世俗+なんとなく思ったこと、すべての融合がmixture-art
貫井徳郎 『愚行録』
Categories: オハナシ


「慟哭」で有名なこの作者、創造性あふれるトリックが魅力。
トリック、というと大抵「犯行のトリック」とかそういう話になってしまうが、
作者はまさに文章のプロ。文章構成でトリックを仕掛けるのが特長だ。

その中から『愚行録』を紹介。
愚行録

愚行録
価格:735円(税込、送料別)

いきなり本文の話題ではないが、後ろの批評で書いてあることが非常に面白い。
「批評をすることで自分がどういう人間か推し量られてしまう」
よくあるセリフかもしれないが、こと愚行録については飛躍的に意味合いが変わってくる。
他人のことを語るということは自らの事を語ることにほぼ等しい。
それは自らのバイアス、願望、その他きたない部分をさらけ出してしまうからだ。

だから愚行録の批評はしにくい、、、と言いながら

なんやかんや批評をきっちり回避したこの人、やるな。

でもおれはあえて晒してみようか。

だって文章を書くことそれ自体、自分を晒す行為に間違いない。今更何を恐るのか。
徹底的な口語調で語られるインタビューの形を取った本文。

そこには主観しか無くて、胡散臭くて、空虚で、聞いていてムカつく。

最初の主婦の章の時点でもし立ち読みだったら切り上げてしまうんじゃないだろうか?
でもそこを各章に挟む謎の女性の語りかけと真犯人への興味でとにかくひっぱる、ひっぱる。
前半はある意味主役でありある意味脇役である被害者夫婦の外面に近い証言が重なる。
単純にそこで登場する証言者達が被害者夫婦が大人になってから接触した者たちだからだ。
大人になると付き合いは浅く、大人になると自分の立ち位置を見極めるのが早い、
大人になると『あえて美化したモノの重箱の隅をつつくのが楽しくなる』なんて
メッセージがじわりじわりと見え隠れする滑り出し。

そこから徐々に証言者が過去のつながりを持つ人物へさかのぼっていき、
核となる学生時代へと導かれる。

「好き」の逆は「嫌い」ではなく「無関心」
好き嫌いは常に表裏一体でどちらなのは主観的判断ですら誤認しかねない。
輪の中心だった妻、優秀で良い人を絵に描いたような夫、
女王様体質の妻、論理的で冷徹な夫、
どちらが正解なのか?わからない。語られすらしない。作者も回答を用意していない。

ただ、気づくとその夫婦の若き頃の愚行を楽しみながら読んでしまう自分がいて、
ふと油断すると本来認識すべき愚行『個人の認識の身勝手さ』を見落としてしまう。
自らの愚行で他人の愚行にヴェールを被せてしまい、、はたと我に返る。
宮村の章がまさにそのターニングポイントだった。
逆に言うと宮村の章で作者の意図に気づけない人は愚行録の醍醐味の1割も楽しめないと思う。
むしろ女性セブンとか読んだ方がいい。
# 言うても自分も正直危なかったです。。。

オススメできるようなエンターテイメント作品ではない。
ただ、文章が好きで、人の本質をえぐるのが好きで、自分に向き合うのも好きな人は、、
どうでしょうか。読んでみてもいいんじゃないかな。

さて、どんな自分がさらされちゃったかな。
あー、あー、そんなカンジだよね。だよね。



mixture-art@Q トップへ戻る

関連記事

西尾維新/悲鳴伝 の良いところを書こう(ネタバレだらけ)
実は西尾維新を読む
貴志祐介2連発「悪の教典」→「ダークゾーン」とりあえず「悪の教典」から(ネタバレ有り)
貴志祐介2連発「悪の教典」→「ダークゾーン」第二弾は「ダークゾーン」(ネタバレ有り)
看護師の妻 シックスセンス 「インシテミル」編 (ネタバレ多数)
Kindleでどうぞ「バウンディング・フェイト」「./account_murder_case」



Comments are closed.