「骨伝導のヘッドフォンってどうなの?」
に端を発して色々書いてみようと思ったら長くなっちゃったので
分けてちょっとずつちゃんと書こうとしている第3回。
前回、前々回の【その1】「骨伝導ヘッドフォンってどうなの?」から始まるオーディオ談義【その1:音が聴こえる仕組み】 【その2】「骨伝導ヘッドフォンってどうなの?」から始まるオーディオ談義【その2:音像定位と頭部伝達関数】では音の聴こえ方と音響の基礎の部分をちょっとストイックに整理したので、今回はもうちょい
オーディオ製品
に近い話をしたいと思う。
音楽を聴く上で気持ちよさは重要だ。
そしてそれをもたらすためのいろーんな工夫の中で最もシンプルかつ一般的なファクターとして
ステレオ感
が挙げられる。
『ステレオ感』は簡単に言うと『広がり感』であって、
感覚的に言うと「うわぁ、いろんな方向から音が聞こえるなぁ」というカンジのことだ。
そんなこと考えたことない人は、そうだなぁ、
コンクリでできてて天井が高くてできれば天井が丸みを帯びてるような建物のど真ん中で
「あーーーーっ!!」とか叫んでみればちょっとここで言ってることがわかるかもしれない。
さて、この広がり感の追求は2チャンネルステレオスピーカーによって始まり、そしてマルチチャンネルスピーカー(5.1ch/7.1ch/9.2ch/11.2ch/etc. ホームシアターとか)によってその概念と機能は昇華されていった。
何でこういう『味付け』が音楽を聴く際に欲しいか、というと
ホールやライブハウスにおいて生演奏を聴くとき、聴取者が聴いている音のほとんどが反射音であるという測定結果に基づいている。
すなわち色々な方向から音が聴こえたら『ライブ感』があるはずだという考え方に結びついている。
音というのは実際大抵の場合で拡散波だ。(あとで例外も示す)
つまり音を発するとそれはいろんな方向に飛んでいってどこかで反射して反射して反射して、聴いているひとのところへ届く。
この割合を『しかるべき場所』で調べたところ、反射した音の割合が圧倒的に多かったという。
そして人間は経験的にその仕組みを知っていて、それと似たような状況に出くわすとそれと同じような感覚に陥るわけだ。
前回の【その2】で挙げた単語を使えば、
音像が複数にぼやけてると人間は広いホールにいると感じ、
音像がひとつだけポツンとあると人間は狭い部屋でしょぼいラジカセから聴いていると感じる
ということだ。
すなわちこれって
バーチャルリアリティ
の一種。
音や映像の世界においてバーチャルリアリティはとても欠かせない。
だって、聴取者の目の前には実際にアーティストはいないし、場所はホールでもスタジオでもない。
スピーカーは立派な放音機構だが、やはり、あくまで生音にはかなわないのだから。
それでも「より良いものをお届けしたい」と日夜オーディオエンジニアたちはがんばっているわけである。
さて、
この「反射音を有効に使おう」という概念を印象的に実現したのは、かの有名な
BOSE
だった。
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BOSE 901WestBoroughスピーカー ペア |
上記に挙げたのは現在手に入る901だが、歴史は40年以上遡る。
このスピーカーの特徴は背面にもいくつもスピーカーユニット(駆動部)が付いているということだ。
下の図は反射のイメージ。
反射せずに直接伝わるものを緑、反射して聴取者に聞こえるものを水色で示した。
後ろ向きのスピーカーから出た音は室内の壁に跳ね返り、またどこかに跳ね返り、跳ね返り、跳ね返り、そして聴こえる。
実に斬新な発想だ。
この図の線を見ると気付くかもしれないが、こういういろんな方向から音が来る状況を、
実際にスピーカーをいろんなとこに置く
ことで実現したのがいわゆるホームシアターなわけだ。
これは当然言葉からも読み取れるように『映画館等でやっていることを家庭に持ってきた』だけである。
ぜひ次回映画館に行く時は周りを見回してみて欲しい。
隠してあったり、隠してなかったり。たくさんのスピーカーが見つかるはずだ。
映画館に入ったら、スッとスイートスポット(音が一番良いカンジに反響して聞こえるところ)に座り、
周囲のスピーカー配置を「へー」とか「ふーん」とか言いながら眺めるようになれば、
これでもうあなたも立派なオーディオ通(のフリができる)だ。笑
さて、毎度の余談だが、
こういうマルチチャンネルの広がり感を擬似的に再現する方法というのはいくつかある。
そのなかで、ひとつ、面白い方法として
ヤマハのYSP
を紹介しよう。
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理屈を一文で言うと「音のビームを作り出しそれを壁に当てて仮想的なマルチチャンネルを作り出す技術」だ。
さて、順を追って説明する。
そもそも音は【その1】で説明したように疎密波なわけだが、
例えばある『疎』なところに別の方向から『密』な空気を足せば差し引きゼロにすることができる。
つまりそこでは音は消えてしまって聞こえない。
これを相殺(そうさい)という。
当たり前だが『そうさつ』ではない。
さて、
例えば2つのスピーカーから全く同じ音を出した場合、
結果として発生する疎密波はこんなカンジになる。
色が濃いところが『疎』だったり『密』だったりするところ、
色が薄いところおよびあからさまに白に消してあるところが『疎』でも『密』でもない『普通』なところだ。
なぜそういう色分けをしたかというと、
疎密波においては疎だろうと密だろうと『変化(変位)』さえあれば音は鳴る。
音が鳴らない状態というのはどっちでもない『普通』の状態のことだからだ。
いくつか疎でも密でもなく、音の聞こえない場所ができている。
そして、
ちょっと飛躍するが、これに対して
「もっとたくさんのスピーカー」
から
「もっと複雑に制御されたそれぞれ別の音を鳴らす」
という条件を付け加え工夫することで、以下のようにしてしまうことが可能なのだ。
真っ正面以外ではまったく聞こえないというスピーカーの出来上がりだ。
このようにして作った音は『ビーム』のように直進し、壁に反射し、回り回って聴取者の耳に別の角度から届く
これを色々な方向へ向けて複数作り出すことで
擬似マルチチャンネル
の完成、ということだ。
これって実際のところ理論的にはずいぶんと以前からあったんだけど
(パイオニアとかが出してた超でっかいやつをとあるオーディオショーで視聴したことがあるが、まぁひどかった)
実用化したところにヤマハのがんばりがあったんだと思う。
アメトーークの家電芸人で徳井がイチオシしたことで一躍メジャーになった。数年前の話だ。
さて、余談終了。
次回はとうとうヘッドフォンの話に入ろう。(ようやく。笑)





