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西尾維新/悲鳴伝 の良いところを書こう(ネタバレだらけ)
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西尾維新の「悲鳴伝」を読んだ。

さて、自分の感想を言う前に
市場の評価だが、非常に酷い

賛否両論というレベルではなく、本当に酷いな。

Amazonのレビューとか見るとわかるけど、
だいたい否定的な意見はこんなカンジ。

あ、ちなみにネタバレを含んでいるので楽しみに読もうと思ってる人はこっから下は読まない方がいい。

・「地球vs人類」という大きな風呂敷を広げておいて、話の大筋が内輪もめ、という規模の小ささ
・秘密道具があるけど使うのはそのほとんどが一回きり
・伏線をたっぷりちりばめておいて大半が未回収
・主人公に共感できない
・長過ぎの割に内容の密度が薄い(1000ページある)
・感情無く人を殺せる主人公が一方えらく感傷的だったりキャラが不安定

まぁだいたいこんなとこ。

えー、極めてもっともなコメントで誰にも否定できないだろうなぁと思う。

おれも上記に関してはおおむね否定する気はない。

とはいえ

これじゃあ話を整理しただけの読書感想文じゃんねぇ。

ならせっかくだ。

良いところを書くぞ、おー!


そして、

そんな素人目にも明らかな批判の落とし穴を作家が気付かないわけがない。
当然担当編集も指摘するだろうし、編集部でも「これで大丈夫?」と言われるだろう。

笑止。

それでも出すわけだ。

シリーズをいくつも抱えている人間が、
出さなくてもよい新作をわざわざ。

つまりなんだろう。

これが実は「このひとホントはこういうことがやりたいんだな」という作品なのだ。

そういう視点で見直すとわからないでもないんじゃないかな。


まぁ、もうちょい突っ込んでみよう。

とはいえその前に読んでいない人のために簡単に

あらすじ

をなめておこう。

・あるとき人類のほとんどが悲鳴とも奇声ともつかない音を一斉に聞いた
・その「大いなる悲鳴」により気が狂い、死に至った人が人類の3分の1にのぼった
・主人公はただの中学生だが突然家族友人、学校、関係するものを全て皆殺しにされそのまま拉致される
・それを行ったのは「地球撲滅軍」を名乗る組織で『日本政府公認』で非常に強い権力を持つ
・過去地球と人類の対立の歴史は根が深く、地球撲滅軍はその先陣に立っている
・地球からの攻撃は災害や地殻変動などでもっとも大きなものが「大いなる悲鳴」
・地球撲滅軍は「人類を守れるなら地球のことは最悪どうなっても構わない」というスタンス
・様々な対立抗争の中で主人公は「怪人」と戦うことを求められスカウトされる
・怪人は地球の手下なのだがまったく人間と見分けがつかない
・過去に地球撲滅軍が怪人だと思われ得る人間を捕らえて拷問したが吐いた怪人はいない
・見分けるための特殊な道具を開発したが使うたびにあまりの怪人の美しさ、魅力に心が壊れる
・主人公が唯一その道具を使いこなせる「あるものをあるがままにしか見れない人間」なのでスカウトされた
・地球は人間に偽装した怪人を送り込むことで人類の結束を揺さぶり形勢を優位にしようとしている。というように『地球撲滅軍は考えている』

ここまでが設定。

その後、組織を脱走するものや、組織内における権力を私利私欲のために使うものなどの
もめ事にほぼ『巻き込まれる』形で主人公はトータル3人の地球撲滅軍の仲間を殺す。

その流れの中で怪人を一人は独力で、他数十名の虐殺においてはサポートする形で関与する。

その虐殺の際に主人公のところに「地球」を名乗る少年が現れて

「また身内を殺してる」
「だから僕は人類を滅亡させることにしたんだ」
次の悲鳴は1年後」

と言い残して去っていく。

そして一連のもめ事について一旦のケリがついたところで「悲鳴伝」は完結〆

言ってしまうと、内容はこんなカンジ。

整理してみると、拾った伏線なんてほとんどないね。笑


さて、あらすじをなんとなく把握していただいたところで、

まず、良い悪いを抜きにして率直な

心の揺さぶられ方

について書こう。

それについて触れなければならない。

むしろそれが全てだ。

私は何より、
ずっと不安感をキープさせられた
のですよ。


主人公も不安定

設定も不安定

話の筋が不安定

まず主人公がちょっと屁理屈なだけで素直な少年なのか
それとも『特異な何かを持ってる』少年なのか
イントロのカウンセリングのシーンからは曖昧なままでスタートする。

そのため、剣藤が主人公の一家を惨殺していたことについて
主人公が何もコメントしない違和感がずーーーーっと残り続ける。

説得力不足と言えば説得力不足。
説明不足と言えば説明不足。

でも多分答えは「まぁいいじゃん。続き読みゃわかるからさ」

なのだ。

以降そこかしこで主人公の『特異性』が見えてきてようやく
それでも終盤になってようやく主人公のその一見不条理な行動が納得いかないでもない、

くらいのところまで落ちてくる。

それでも正直納得いかない。ここは不安定。

さらに、これはあからさまに用意された不安定だけど、

「地球撲滅軍は本当に人類の味方なのか?」

これには作者なりの皮肉がたんまり込められている。

・「大勢を救うためには少数の犠牲は仕方なし」と言い、平気で人を殺す
・戦力になるなら人格破綻者もやむなし
・『大義』の前に思考停止。上の言いなり
・人体実験、拷問、改造人間、何でもあり
・殺人にしか役に立たない道具をたくさん作っている
・大抵のことは封鎖して情報操作すれば揉み消せると思っている
・「怪人」をちゃんと見れた人間は主人公が初めて。でもこれまでに相当数の怪人を殺している

ちなみに最後の一文はきっちり拾ってくれた。

すなわち「怪人は人間だ」と。

それにしても、こういうぶっとんだ設定を書かせると西尾維新の良さが出ているような気がする。

そして、

こういうのをサラッと書けて

さらにその責任が取れる人は少ない。


さて、

つまるところの『揺さぶり』の正体なのだが、

私の解釈ではコレだ。

「正義の組織」と作中の人間たちに必死で、まるで言い訳のように繰り返し言わせながら
実は

悪の組織

を書いていた。

しかもかなりぞっとする悪。

自分が正義だと思っている悪。

「悪をやるぞー!」と言って集まったわけではない悪。

気持ちの悪い話だし、ストレートに読んじゃう人にはかなりツラい話だ。

戯言使いシリーズを読みながら、
気がついたら主人公の「いーちゃん」に感情移入しているような真っすぐなひとには
悲鳴伝は読んでいてツラい話だと思う。

あれは最低な人間ですよ。作中で本人もそう言ってるけど。

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つまりそこら辺の薄ら寒さが魅力の作品だと言える。

ということでかなりの変化球だ。

ミステリーを期待していたひとには肩透かし。

ヒーローものを期待していたひとには的外れ。

めだかボックスだったり物語系だったり
そっちを期待している人はかなりズレているので本当に無理。

第一主人公が全然ヒーローじゃないしね。むしろ真逆。まさに薄ら寒くなる人間。

つまりレビューにもその影響は出ていて

「初期の作品の匂いを感じる」
「まったく新しい主人公、ではなくて、これっていーちゃん(戯言使い)では?」

という言葉がチラホラ見受ける。

サイコホラーとして読んだら悪くないんじゃなかろうか。

それも派手ではない、地味なサイコっぷり。


そして

伏線を回収していない

という件については率直な解答が。

今度、2/27に「悲痛伝」という続編が出るらしい。

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したがって回収するんだろう。できる範囲で。

しかし、
「続編があるんだからいいやいいや、おっけー」
とは大半のひとが言わないだろう。

これを読者に明示しなかったのは若干不親切だったと言わざるを得ない。

そういうのって普通だったら微妙なところなんだろうけど
これだけ未回収の伏線がある状況ではちゃんと示唆して欲しかったなぁ。
一応なんていうか、著名作家である責任というか。

まぁ、つまらない話だ。


ということで端から端まで微妙な気持ち悪さが蔓延る「悲鳴伝」
これはこれでアリだと思うんだがね。


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