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看護師の妻の成長 〜賞金付きピッチコンテストには気をつけろ〜

このシリーズで書くのは久しぶりだが、先日「積年の成果」を見たような気がしたので書く。

というのも前段としては、うちの妻は医大の看護学科を出て看護師をやったあとに私と結婚して無理やりアメリカに連れて行かれたという所謂「フツウの元看護師の主婦」である。超安定志向、保守的、田舎安定生活ウェルカム、そんな人間をアメリカまで連れ回して引き回してリスクとリワードの荒波を行くボロ船に無理やり同乗させている罪の意識くらいは私にもある。多少はある。ような気がする。まぁ一応少なからずあるんじゃないかと思う。
ここで言う『フツウ』というのは、ネットもわからない、ものづくりもわからない、スタートアップのことなんて当然知らない、オタク的も要素ゼロ、という姿のことである。
しかしながら私が仕事のことは何でも妻に話すという影響からか、特にここ数年、確実に妻の言うことが的を得てきているように感じる、そんな結婚6周年。そんななか、先日のとある会話。

私「さっきうちの会社がテレビで扱われてねー」
妻「へぇ、なんかあったの?」
私「スタートアップ◯◯ってのがあってね。それに出た関係でさ」
妻「なんか凄そうな名前ね」
私「、、、賞金◯億円」
妻「賞金?出資じゃなくて?」
私「!!!」

この極めて適確なツッコミに私は感動した。
そう、この話、実際は出資なのだ。

というかこの手のスタートアップをターゲットして「賞金◯◯円!」と掲げるイベントでは実態が出資であることがほとんどだ。良くて助成金。しかし助成金には条件がつくことが多く、例えば「3000万円使ったら1000万円助成する」というような後出しの形がほとんどだ。つまり「そもそもそんな金ねぇよ!」「あ、じゃあ金利の良いところをご紹介しましょうか?」というような話だ。なかなか巧く出来とる。

さて、出資と賞金で何が違うかというと、、、

天と地ほど違う

ある友人のCEOが言っていたが
「出資を受けるのは常にワーストケース」
これは本当にそう思う。出資を受けるということは株を渡すということである。株を渡すというのはどういうことか?色んなひとが色んな喩え方をするが、私が一番適切だと思うのは「結婚するようなものだ」かな。

「結婚して妻は変わった、、、」なんてよく言うけど、変わったのはそれぞれの本質の話じゃなくてお互いの関係性。単に付き合ってイチャイチャしてるだけの日々と、生活を共にし家庭を作っていくという過程は置かれている状況があまりにも違い過ぎる。後者においてはお互いが運命共同体、真の意味での戦友となる必要があるのだ。そうすると、甘えが通じない部分も出てくるし、厳しい言葉でやり合わなきゃいけないときもある。しかし本当の意味で、弱音も強がりも全てをごたまぜにした肚を割り切った言葉が交わせる関係性を得るということでもある。その分両者の繋がりは強く、そして切り離すには大変な労力がかかる。

つまり言ったように、投資家との関係性というのは本来そうあるべきなのだ。
だからノリで出資を受けるなんてことはノリで結婚するようなレベルであり得ない。
つまり「ピッチコンテストで優勝したら出資を受けることができます!」なんて「ネタ番組で優勝したら◯◯(←お好きな芸能人を当てはめて下さいw)と結婚できます!」くらいの『嬉しいけどリアルに色々考えたときの微妙さ加減』なのだ。

投資家から金が入った後に「どうせ文句言ってきたりスケジュール急かしたりしてくるだけだろー。言わせとけ言わせとけ」とか思っているとそれは認識が甘い。まさに結婚なのだからいつまで亭主関白でいれるかわかったもんじゃないし、気付いたら尻に敷かれているどころか夕飯のおかずが自分だけ一品少なくなっていてもおかしくない。
逆に「投資家は金だけ出してくれればいいよ」という認識も甘い、というか勿体無い。「妻は家庭を守ってさえいれば良い」と言っているようなものだ。結婚は真の意味での運命共同体。だったらお互いがアイディアを出し、時に監視者となり、必要に応じて踏み込んだサポートをしていくということは当然の営みのはずだ。

上記は投資家とスタートアップ経営者の関係性についてあくまで一部を切り取ったに過ぎないが、このようなことを鑑みると「出資を受ける」という行為は非常に重たい。短期的に感覚や条件が合っているかどうか、長期的にビジョンを共にすることができるかどうか、しっかりとお互い吟味して進める必要があって、決して『お金を持っている方が偉い』わけでもないし、『今ノリノリのうちはマジで入れ食い状態だぜー』というわけでもない。そう単純な話ではないのだ。ここら辺もまさに結婚。

最後に加えて言うと、ほとんどの場合でこの手の「賞金付きピッチコンテスト」は以下の面でマズいことが多い。
・金額と出資時の株式割当率がおかしいこと(出資側に有利過ぎること)が多い
・知的財産に関する取扱に危険なこと(主催者側に有利過ぎること)が書いてあることが多い
これは明らかに『知識が浅く経験も薄いけど技術があるスタートアップを狙って喰い物にする行為』だ。
アメリカにいたとき、弁護士でスタートアップ育成にも経験豊富な人間にこの手の話を相談して書類を見せた際「お前は会社を売り渡すつもりか?」と言われたことがある。そのくらいのことがさも当り前のように書いてあるのだ。

知識は力である。十分に戦える論理武装と交渉に耐えうる図太さを身につけた上で、ある種の打算を持ってこのようなイベントに参加する、というくらいの強かさを持ってるなら、それはそれで有意義なのではないかと思う。

リビングでカタカタパソコンいじりながらこのポストを書いている際に
妻「何やってるの?」
私「ブログ書いてんの」
妻「久しぶりじゃん。まだやってたんだw というかネタは?」
私「この前のスタートアップ◯◯の件ね」
妻「優勝できなかったって話?」
私「いや、例の賞金付きコンテストの話」
妻「ああ、それって私の活躍の話かw」
こういうところは嫌いじゃない。うちの戦友。結婚6周年ありがとう。