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新時代アーリークロスの提言(コンフェデ杯 ブラジル戦より)
Categories: No Football No Life

6月15日コンフェデ杯の日本vsブラジル戦で
ブラジルが見せたプレーに非常に強い感銘を受けた。

試合は惨敗だったがそれ以上に何か新しいアイディアと
トレンドの変化の兆しの予感がグッときた。

それはアーリークロス

ブラジルはチーム戦術として『新しいアーリークロス』に徹底してトライしていた。

偶然でも個人の思いつきでもなく明らかに戦術として行っていたのだ。


そもそもアーリークロスという言葉が出始めたのは
西ドイツ代表が優勝した1990年のイタリアW杯頃の話だったと思う。
西ドイツの左サイドバックのブレーメ
初代アーリークロスの名手だった。

その言葉がトレンドとして世の中に定着したのは
ブラジル代表が右にジョルジーニョ、左にレオナルドを擁し
5−3−2のシステムを世に知らしめアメリカW杯で優勝した頃だった。

アーリークロスには主に2つの利点がある。

・早いタイミングで上げることでディフェンスの虚を突くことができる
・サイドバックが敵陣を深くえぐる必要がないためリスクが低い

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しかし逆に言うと古くから存在するオーソドックスな
敵陣を深くえぐったマイナスのセンタリングは以下の点で優位である

・マイナスで来たボールはシュートが打ちやすい
・視野の関係でディフェンスがボールウォッチャーになりやすい

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つまりこれはこのままアーリークロスの欠点の裏返しでもある

・センタリングを上げる側もシュートする受ける側も技術を必要とする
・ディフェンスはボールも敵のフォワードも同時に視界に入るので対応しやすい

これがヘタクソなアーリーばかり連発するチームが陥る落とし穴だ。

そしてそれを一段階発展させて現在アーリークロスの主流となっているのは

言うまでもなく速くて低いニアへのクロスだ。

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このボールはもはや触れば入るというやつで
サイドの人間の必要な技量は格段に上がるが、
良いボールさえくればフォワードは決めやすく、ディフェンスは守りにくい


さて、しかしブラジルが見せたアイディアはまたひと味違うものだった。

言うなれば、

速くて低い、バイタルへのクロス

そしてさらに言うと

キックはインフロントで曲げず、インステップの真っすぐだった。

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利点は
・縦へのドリブル突破を警戒しているディフェンスにはまずブロックできない
・センターバックにとっては最も警戒しているエリア(=自分の背後)の逆にボールが来るので対応し辛い

欠点は
・ダイレクトでシュートするのは難しい
・つまり2タッチ以上する、もしくは2人以上が絡む必要がある
・速く低いボールはコントロールが難しい

この精度が必要なプレーをそつなくこなすことについては
高い技術を持っているブラジルならではというのはあるのだが、

この狙い自体は見習うべきところがあるのではないかと思う。

なぜなら

近年のセンターバック高さ・速さともに取り揃えた屈強な選手が多い。
ある時期から、ガタイが良いだけ、ヘディングが強いだけのセンターバックが
ガクッと減ってきたことに気付かされる。

通用しないからだ。

進化する戦術、様々な攻撃パターンに対応するために
ディフェンスとして必要とされるキャラクターも進化している。
それは高いレベルにいけばいくほど尚更のことだ。

それに対してボランチはどうかというとチーム戦術によって未だバラツキがある。

『パサーを本業とするボランチ』
『潰し屋を本業とするボランチ』
『上下にダイナミックに動いて得点にも絡むボランチ』
『とにかくバランスを取ることに終始するボランチ』
『本業はトップ下のボランチ』
『本業はディフェンスのボランチ』

様々だ。

これは時により武器にも穴にもなる。

つまりディフェンスが固いと言われるチームにも
得てしてボランチのディフェンス能力に穴があったりするわけだ。

ブラジル戦を振り返ってみると
1、2点目はどちらもゴールを決めたのは
1.5列目のネイマール、3列目のパウリーニョだ。

フォワードではない。
しかもシュートエリアはバイタルエリア。

これはボランチが潰すべきだったと明確に言い切れる。

端的に言うと「日本のボランチは守備が弱い」と評価され、
そしてそこを見事に突かれた、と。

実際、遠藤長谷部も元々はトップ下やそれに近いキャラクターで、
努力で守備を身につけたボランチだと言える。
フィジカルは普通で、彼らが潰しまくり削りまくり、なんて試合は見たことがない。

まぁ擁護する声もあるかもしれない。

しかし事実、長谷部はヴォルクスブルグで未だになかなかセンターを張らせてもらえない。
それはひとつにフィジカルの問題があるはずだ。
遠藤はたまに経験から来る華麗な守備を披露することがある。
「ピンチを救うスーパープレー」というやつだ。
それは一見守備ができているように見えるが
本当はそうなる前に防ぐのがスジであって、
むしろ相手に対して「中央でボールを回すのは怖い」
というくらいの威圧感を放ってもらいたいものだ。

日本代表は
『ボランチの守備力』という非常にハッキリとした弱点をぶら下げている
ということをブラジルに暴かれてしまった。

来年のブラジルW杯に向けて、この課題は重くのしかかるかもしれないが、

とはいえそれはそれ、

ブラジル戦でひとつ大きな収穫があったことも忘れてはいけない。

南アフリカW杯の頃、さらにその後のシャルケでの最初の1,2年は
守備力不足からスタメンを外されることもままあった内田
先日の試合ではネイマールのドリブル突破をほぼ封殺したことだ。

ここの事実から、
局面のディフェンスについては『個人の成長』で十分修正可能
だと言い切ってしまいたい。

コンフェデ杯はあくまで課題抽出の場。

それぞれがそれぞれに課題を持ち帰り、この一年をどう過ごすかで
希望的観測でも楽観的想定でも何でもなく、十分ひっくり返せるのだというところを見せて欲しい。

ともあれ、、、まずはイタリア戦に期待しよう。