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何故「とりかご」はできないかを真面目に考える
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まずは説明ほぼ不要だろうが、

キャプテン翼

について補足。

言わずと知れた不朽の名作。一巻が発売されたのが19〇〇年
その後、様々なシリーズが出ているが、まぁ細かい説明はwikipediaにでもお任せしよう。

もう漫画的表現が山盛りのこの作品。
第一回からこの調子。さすが。


そして唐突だが、今回とりあげたいこの『名シーン』

【とりかご】

第2巻 南葛小vs修哲小 において修哲小が使ったハメ技だ。

ご存じない失敬なヤカラ向けに説明しよう。



場面は修哲が一点リードしている状況。

修哲の右サイドにはウィングの名手、滝くんがいる。
サイドを突破してセンタリングを上げるのはお手の物。
そしてセンターには点取り屋の来生くんヘディングの強い井沢くん

言うまでもなく南葛はへっぽこ

つまり滝くんにセンタリングを上げられてしまうと南葛はかなりピンチ。

そんな状況で


手順①
あえて修哲はディフェンスラインでボールを回し続ける。

手順②
南葛が焦ってボールを取りにきたら修哲はすぐさまボールを滝くんへ
そうすると南葛はディフェンスを固めなければやられるのでみんなゴール前に引かざるを得ない

手順③
滝くんはセンタリングを上げよっかなー上げないっかなー、とじらした挙げ句、
結局センタリングは上げずにまた後ろに戻す


これの繰り返しだ。

image

つまり南葛はボールを取りに出ていったらやられるし、出ていかなければこのまま時間切れ。

袋小路、まさに【鳥かご】というわけだ。

そして作中ではこのとりかごを石崎くんが破る。

「おれに任せろ」と一人でボールを追い続ける石崎くん、
必死に一人で追い回すが取れるわけがない。

そりゃそうだ。実質、1対5〜8でボール回ししているわけだから。

するとついにしびれを切らせた南葛の他の選手たちが全員突っ込んできたところで

「おい、ヤバいぞ、センタリングだ」

「(センタリング?それなら滝へパス?)」

と見事にコースを呼んでパスカット!



いう展開なのだが、これってある意味スゴい発想。

作者の高橋陽一はまったくサッカーを知らない人間だったというのは有名な話で、
そんななかでキャプテン翼を書いていたというけど
それが逆にこういう斬新な作品を作ったという『効能』は特筆すべきだ。

分かってないから、思いきっていける。

だって、なにがトンデモかって、
やはりサッカーと戦術をいくらか理解している人間には到底考えつかない発想だからだ。

現に当時キャプテン翼を読んだとき私は小学生。
小学生って漫画の技って何でも真似するよね。

オーバーヘッドキックは当然のこと、
スカイラブハリケーンだってやってしまうのがガキンチョというものだ。

ただのシュートだって「タイガーショットだぁ!」って叫びながら打てば
それはもうタイガーショットになるし、
ただのカーブも「ワイのカミソリは二枚刃や!」って言いながら打つわけだ。

ツインシュートにどんな回転がかかってるのかなんて深く考えないし、
一旦逆ポスト側に走っていってから三角飛びをやるよりも
真っすぐ素直にボールを追った方が速いということに気付くのももうちょっと先の話だ。

しかし、

『とりかご』だけはやった覚えがない。。。

「地味だし」
「まず、無理だし」

基本的な戦術の話になるが、
まずとりかごをやられた状況は『0−1で修哲がリード』だった。

南葛の立場に立つと「ゴール前を固める」というのはそもそも
「同点狙い」か「リードしてる時」しかできない。

つまりこの状況では選択肢無しでボールを取りに行くしかないわけだ。

で、その際にも戦略はいくつもあって

・ディフェンスラインを上げる
・マンツーマンであたる
・前線はマンツーマン、ディフェンスラインはゾーンにする
・前線とディフェンスに人数を割く代わりにフォアサイドの中盤を捨てる(ワンサイドカット)
・サイドの出所で潰す(最後に石崎くんがやった取り方ね)


軽く説明すると、
まずプレスをかけなければ修哲は延々ディフェンスラインでボールを回し続ける。

ということでフォワードがプレッシャーをかけるわけだが、
その際中盤がガラ空きになったら間違いなくやられる。
したがって全体が連動してラインを上げなければならない。

image-1

これが一点。

次にその追い込み方だが、ゾーンプレスとマンツーマンが考えられる。
ゾーンは戦術的にも高度だから南葛にもわかりやすいのはきっとマンツーだろう。
一人一人を明確に割り当てて、少なくともそいつだけは目から離さないように追いかけ回す。

しかし、南葛は1対1の状況で互角の勝負ができるメンバーは多くない。
ディフェンスラインは人数を割いてゾーンを固めた方が懸命かもしれない。
その分、逆サイドの中盤は手薄になってしまうが
1点ビハインドの状況ではそのくらいのリスクを負うのは仕方のないことだろう。

image-2

そして潰しどころのポイントは
・相手にとって選択肢が少ない場所
・1対1、もしくは1対2が作りやすい場所
・狭い場所

ということでサイドが最も効果的だ。
したがって「サイドで潰してやる」という意識統一をしてボールを追いかけ回すわけだ。


と、このような理屈と戦略が古くから存在する。

だって、そもそもサッカーは

「いかに相手のボールを奪って
相手にそのボールを奪われずにゴールまで運ぶか」

というゲームなのだからリードしてたら安全策でボールをキープするのはよくある話だし、
その状態のボールを奪いにいく行為は至って普通の話だ。
したがってそれをどうにかするために数々のディフェンス手法が存在する。

それが手も足も出なくなるって、、

どんだけだね、南葛!と。

「まぁ、そんなことは小学生には気付かないよ。
だって南葛小ってスゴい弱小って設定だったじゃない

それはそうなんだが、、、

、、、、

いやいやいやいや、いたでしょ!?ベンチに!

元ブラジル代表が!ロベルト本郷が!

「(とりかご?小学生ごときがなめた手法を。
 そんな手がこのロベルト本郷に通用すると思ったか!)」

ベンチを飛び出しテクニカルエリアギリギリまで出るロベルト

「よし、ディフェンスラインは押し上げて
 来生には学がマンツーマンでマーク!
 ロングパスには翼がカバーリングに入れ!」

「FWの3枚でボールサイドにプレッシャーをかけて
 前線ではワンサイドカットだ!
 翼、どっちに追い込むか指示を出せ!」

「滝のところは石崎がパスコースを潰して
 もう一人がマンツーで当たれ!
 その分逆サイドのウィングとトップ下の井沢は
 多少ルーズにしても構わない!
 バイタルはパスの出所を翼が自分の判断で狙え!」

ちなみに翼は南葛で数少ないディフェンスがちゃんとできる選手なので
このシーンで前線に残すのは得策ではない。
ボールを取った後のオーバーラップで十分だ。

これで良い。

名将ロベルト。さすがさすが、って話だ。


実際、南葛がこういう指示もこなせないレベルのへっぽこだったり、
結局放り込んだロングボールであっさり点取られる程度だったら
修哲は問題なく勝つことができる。

しかし若林くんは
「南葛を倒すべき敵として認めた」
という状況で、あえて
よほど圧倒的な戦力差がなければ通用しない戦略を持ち出した。

やっちまったなぁ〜若林。

でも、ロベルトに救われたな、ロベルトに。

まったくもう。

ハーフタイムに

「おれもよく監督の指示を破ったもんだ。はっはっはー」

とか言ってる場合じゃないぞ。イマハオマエガ監督ダ。チャント仕事シロ。



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