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『Xcode』『Android』『Arduino』というキーワードで括る未来


先日ちょうど同僚とそんな話をしたのでせっかくだから普段から思っていることをまとめてみる。

『フリーミアム』

という言葉はご存知だろうか?

経済用語らしいがそんな構える必要はなくて
要するに「タダ」を有効利用するビジネスのやり方のことだ。

クリスアンダーソンの『FREE』はとても有名な著書だ。
電子版ではそのタイトルの通り無料で提供された。

本の内容をここでツラツラ述べるつもりはないが
簡単に言うと


無料を有効活用しビジネスチャンスを広げる成功者と
無料経済に圧迫され商機を失ったり無意味な無料に陥る失敗者とがいる、

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ということを色々例や歴史の変遷を挙げながら解説してくれる本だ。
なかなか読み応えがある。

誰でもよく知っている例は広告を目的とした「ティッシュ配り」だし、
「言われてみれば」という例は売上げ貢献を目的として「曲をラジオで流すこと」だ。

世の中様々なフリーミアムが溢れている。
そんな中でまずはいくつか光っているものを挙げてみたい。


例えばキーワード順にまずは

Xcode

について。

Xcodeは『iOSアプリを作るための開発環境だ』という理解でとりあえずは良いと思う。
(当然他にも色々やれるんだが、ここで述べたいのはそういうことではないので割愛)

AppleはiPhone 3Gが発売されるタイミングでApp Storeの環境を構築した。
そしてその際にXcodeを無料で公開したのだ。

iOSのアプリケーションはObjective-Cという言語で書かれている。
(というのは完全に正確ではないが、本論に無関係なので割愛)
C++の親戚みたいな感覚だが、まぁそのものではない。

つまり多くのソフトウェア開発者にとって
「Objective-C?マジで〜新しい言語なんて覚えたくねぇよ」
だったわけだ。

でも、現実の流れはそのセリフとは全く逆へ向かう。
多くのソフトウェア開発者がこぞってObjective-Cを習得し始めるのだ。
これは当然言語そのものの善し悪しもさることながら、
Xcodeという優れた統合開発環境が最初から用意されていたことが非常に大きい。

しかも無料だ。

とりあえず試しみて、嫌だったらやめれば良いのだ。

みなとりあえず「目新しいから試してみっか」くらいで始めて
そしてのめり込んでいった。

そして市場ができ、その価値が認められていくと
今度は「仕事として」とか「アプリで儲けたい」とか
違うモチベーションを持ってObjective-C修得者は増えていった。

フェーズがひとつ次へと進んだのだ。

そうやって『デファクト』となることで
Appleは携帯アプリマーケットを自分で切り開いたように見せかけて
多くの会社や個人が、その規模や開発者としてのレベルを問わず
自ら進んで勝手に切り開いていったのだ。

そして全ての成果はAppleがきっちり回収する仕組みになっていた。

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これは多くの「一攫千金」を目指したアプリ開発者たちが少しあとになって気付くことだった。

この流れの中では
非常に優れた開発環境であるXcodeを無料で提供した
という見事なフリーミアムに驚嘆せざるを得ない。


次のキーワードへ行こう。

Android

だ。

Androidは発表当初、一見Googleらしくないビジネスだという印象を受けたし、
「結果」というものを「シェア」と捉えれば大成功を収めているが
収益モデルが少々まわりくどいため
「本当にどのくらい収益に貢献しているのか?」の判別は実は難しいところだ。

実際、既存の収益性の高いチーム(Ad系)や、
思い切りバッティングするChromeなんかとの社内での関係性は未だに微妙だと聞く。

さて、その

「回りくどさ」

だけれども最初にAndroidが無償で公開された時にはどう思っただろうか?

「Googleがやることなんだから無料で当然だよね。そりゃそうだ」って思ったか

「携帯用OSが無料!!??」って目玉が飛び出たか。

スマホ以前の時代の携帯用OSといえばSymbianなんかが主流だったが
きっとSymbianを使っていた携帯メーカーはNokia(それ以前はPSION)に対して高額なディールを支払っていたか、何らかの形でリベニューシェアをしていたはずだ。

OSという広い意味で言うとUnix/Linuxというのは無料のOSだ。
しかし、これは最初からオープンソース。有志が作ったものだ。
簡単に言うと、
どこかの企業が営利目的で作ったものではない。だから無料で当たり前。
だ。

もしくは第三のリアクションとしては

「カーネルがLinuxベースなんだからGPLに則って公開するのは当たり前だろ」

という非常に理解が進んでいた人もいたかもしれないが
じゃあ逆に「何でGoogleはLinuxベースなんかでAndroid作ったわけ?」という疑問が生じる。

答えは簡単だ。無償で公開する前提があったからだ。

さて、

対するiOS。
AppleはiOSをどこへも提供をしないし、全くするつもりがない。
そりゃそうだ。
多大なる期間と費用を投じた成果がたんまり詰まっているわけだから。
そりゃそうだ。

うーん、

なんかだんだん何が合ってて何が間違っているのかわからなくなってくる。

この理解のためにはまずは前提として
「Googleのビジネスモデルは広告モデルだ」
ということを理解しなければならない。

当然Googleは自分で広告を打つわけではないから
「いかにお客様の広告をみんなに見せるか」ということがGoogleの収益を決めると言える。

その「見る」という行為の主役は今後スマホである。

だからそのプラットフォームで圧倒的なシェアを取る。

そうすればいずれ広告収入がついてくるはずだ。

そんなカンジ。
いざ紐解いてみると論理は単純なのだ。

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実際Androidのシェアは飛躍的に伸びている。
それもそのはず、だってOSが無償で提供されたんだからなぁ。。。

ちなみにAndroidのポーティングってある程度実績があるCPUに対してなら
さほど特別で複雑な機能がなければ「4人、2ヶ月」って感覚だ。
つまり、使う部品とかが決まってたら約2ヶ月後には
『けっこーまともに動くスマホ』ができている。

逆にOSをオリジナルで作るとしよう。「30人、2年から3年」だ。

この『無料』にはそりゃ飛びつくわ。ここまではバッチリ。
あとはマネタイズとその効果検証だが
しかし、こんだけシェア取っててそんなに悪い結果にはならんだろう、
ということは楽観的に想像ができる。

きっとAndroidはすぐ畳むようなことにはならない。


余談だが、

これらの事例のようなフリーミアムに対するスタンスだが、

日本は弱い、アメリカは強い。率直に言って。

まさに「BUY1GET1FREEの国は強かった」とコメントせざるを得ない。



ラストは

Arduino

について。

これはひとつだけ少々毛色が違う印象を受けるのではないだろうか?

軽く説明するとArduinoは元々は学生の実験や試作のために
「安価で簡単で使いやすいプラットフォームをオープンで作ろう」と始まったプロジェクトだ。

そしてその「オープン」の言葉通りに全ての設計情報はネットで公開されていて
それを元に基板を作って売っている人もいれば
Arduinoを応用して別の派生プラットフォームを作って売っている人もいる。

GPL、すなわちコピーレフトのハードウェアなのだ。

当然Arduinoを動かすためのファームウェア開発環境なんかもセットになって提供されているし
多少プログラムをかじった経験があるひとなら軽く2、3行書くだけで基板を動かすことができる。
その簡便さからここ数年ではメディアアーティストおよびその卵たちの中で
よく使われるようになっていっているらしい。

なお先ほど述べた『コピーレフト』とは

「全ての二次著作物がOK!」

という夢の仕組みのことで既出のAndroidもそれにあたる。
(正確には部分的にうんぬんあるのだが本論に影響ないので割愛)

加えて二次著作者はそれを用いた三次著作、四次著作を許さなければならない。
むしろそれをサポートしろ。

というくらいのかなりオープンで発展性のある概念だ。

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既出のUnix, Linuxはまさにそれにあたり、
そのオープンな考え方のおかげでたくさんの有志の協力が集まり、
結果、十分に使えるクオリティのOSが完全フリーで出来上がっていったのだ。


さて、なぜ今回のテーマでわざわざ3つを並べたか、

そこにようやく触れられるな。

まず、そのコピーレフトの概念だが
Xcodeには通用しない。

AppleはXcodeをバイナリ状態で提供しているために改編も許可していないし
iOSのライブラリもブラックボックスで改編は当然できない。
そして結局のところかなり具体的な収益がすべてAppleを通るようにできている。

Androidは完全に公開されていて誰でも二次著作でも三次著作でもすれば良い、
というスタンスだ。
しかし実際はそう言われたところでOSという複雑なものを
大部分リニューアルして派生版を作る根性も労力も普通はないので
現実には皆Googleから提供された生Androidをちょっとばかしカスタマイズして使っている程度だ。
つまり「一応みんなGoogleの手のひらの上」なのだ。
一応、ね。
まぁそれもあってか無くてか収益については「様子見」というカンジ。
現状、明確にものすごい成果が出ているわけではないと思う。

前者はかなーり直接的で、ある意味ゴリ押しの力技
しかし綿密なフリーミアムだと言える。

後者は非常に遠回りで分かりにくいが、
つまるところ直球なフリーミアムだと言える。

さて、


どっちが勝つのだろうか?

どっちが未来に残るのだろうか?

Appleはもはや圧倒的な勢力を持つ巨大企業だ。
誰も逆らえるとは思えない。
戦略に統率もとれているし、マネタイズも万全だ。

AndroidはシェアこそあれどもGoogle社内でもポジショニングは微妙で
収益貢献度も、結論保留といったところではないだろうか。
OS自体のクオリティもiOSに勝てているとは到底思えない。
しかし、
最大の魅力として「無料」「オープン」「改編自由」が存在する。
新規でAndroidを採用する企業、分野はここ数年でも数が知れない。

どちらの文化が勝つのか?

何をもって勝敗とするか、というのは当然根本的な問いになるが、
これは非常に重要な問いで、それを明確に定義し結果を予測することが
産業の未来を予測することにも繋がるかもしれない。

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そして明らかにAndroid側に属するArduino。

勢力と呼べるほどのものはまだ持っていないし爆発力も無い。
マネタイズもそもそもそれを目的としたものではなかったので不明確だ。
しかし「無料」「オープン」「改編自由」のDNAはハッキリと存在する。

将来何かしかるべき役割は回ってくるのだろうか?

近年「スマホのアプリを小学生が作った」なんて話もよく聞く。
ソフト開発のハードルは低くなり、簡単に開始できるようになったからだ。


じゃぁこんなのは想像できるだろうか。

「smaphoduinoを使ってオリジナルスマホを小学生が夏休みの工作で作った」
「部品はAmazonで全部買えるからね。僕のお小遣いで十分足りたよ」

スマホのアプリをきっかけに起業する人もいくらか見受ける。
一人で立派な設備も何も無くてもすぐに収益化が可能だからだ。


じゃぁこんなのはどうだろう。


「Arduino-xxxプラットフォームで美大生が作ったデザインウォッチが大ヒット」
「生産はArduino系製品の生産大手Duino電機が担当」
「プラットフォーム自体の価格が非常に安いのでコストを抑えることができました」
「開発期間?一ヶ月くらいですかね」


「あのクソ部長の頭でっかちがーーー!新規商品の企画、全然とおんねぇよ!」
「へ〜、どんなの?見せて見せて」
「ホラ、これがこうで、こうなわけよ。市場の潜在ニーズもあるし、利益も取れる。
 で、さらにね、ココ、ココ、ここが画期的なわけよ!」
「ほ〜、いいじゃんいいじゃん。おれこれ欲しいよ」
「だろ!だろ!打ろーーー!」
「うん。なら、作っちゃうかぁ〜?」
「マジで?!」
「うん。これなら最近出たxxxduinoとArduino-@@@と###duino-extensionの組み合わせで、
 あとはホラ最近有名なDuino電機のカスタマイズ製品プログラム使えば、、、」
「OK!すぐ試作しよう、試作。んで次の商品会議に突っ込む!」
「はぁ?何言ってんだよ売るんだろ?売っちゃおうぜ〜」
「え?そんなことまでできんの?」
「と〜ぜん。Duino電機だけじゃなくてArduinoに特化した製品化サービスって最近多いんだぜ〜。
 アイディアとブロック図程度から作ってリベニューシェアする仕組みもあるし、
 当然自分でできるとこまでやってAmazoduino経由で売ることもできるしね〜」
「それだ!よし、やってやるぜーーー!」

なんてね。

世界が変わるかもしれない。

そんな予感を共有できないだろうか。


インターネットやスマートフォンがもたらしたような
爆発的でバブル的な盛り上がりとはひと味違う、

未来に向けた緩やかなパラダイムシフト。

なお、当然だがここでArduinoは一例として挙げているに過ぎない。
将来は何か別の『フリープラットフォーム』が一時代を築くかもしれない。
これは私の知るところではない。

が、期待したい。

つまるところ、時代は次の時代を望む。

私の期待、みんなの期待、そんなものが集合体を成す。


じゃあ次の時代って何さ?


そんなものの解答はそこらへんには転がっていないが
そこらへんに転がっているもののひとつを磨いたその結果が
いつも、いつでも次の時代の解答へとつながっている。



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