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『IoT』『Makers』ー バズワードに翻弄されずに本質を見ようじゃない

時代は『IoT(Internet of Things)』である。

『Makers』が世界を変える。

どちらも同意だ。しかし言葉が一人歩きするのは、、、
まぁ放っておいてもいいのだが迂闊に流されないように注意しなければならない。

先日久しぶりに『ぼんやり考え事をする時間』があった。
と言ってもたかがバス停で帰りのバスを待っている数分程度のことだが、ここ最近はずっと仕事のこと、子どものこと、サイドプロジェクトのこと、さらには先月は2週間のドイツ旅行もあったし、その前は旅行の準備、、、さかのぼればあまりにバタバタで落ち着いて考え事をする時間がなかった。当然ちょっとした空き時間はあるものだが、そういう時間は大抵ニュースのチェックや最新の技術情報のキャッチアップとか、なんか業務のような業務じゃないような、そんな行動に費やされてしまう。ついつい。
ということで、意識的にではなく、ごく自然に空き時間ができたのは非常に久しぶりだったのだ。

そうすると、

「せっかくだから何か本質に迫るような考え事をしよう」

と思うものだ。

そこで積年の課題「ハードウェアビジネスの将来はどのような方向に向かうのか?」について思考を進めてみた。

前述のキーワードのとおり、確かに時代は変わって来ている。それも順調に。
インターネットソリューションだけの提案で成立するビジネスは飽和したと言えるだろう。競争は激化し、プロフィットは低減し、結果企業数もどんどん少なくなり、そしてそれらの企業価値も縮小傾向にあると言って差し支えないだろう。これは至って自然な時代の流れだ。とはいえ、大型買収のニュースに「この金額、頭おかしいんじゃないか?」と思うようなことはまだ多少残っているが、あくまでここで捉えておきたいのはそれら派手な見た目の背後にある市場全体が持っている、特に末端における状況だ。そしてその一方で対照的にハードウェア関連のビジネスが活況で、世間的にも注目を集めてきている。
背景や実例については各種書籍やネットニュース等で十分確認できるはずなので、ここでつらつら得意げに述べるようなことはしない。

なので早速本論に入りたい。

きちんと『ハードウェアスタートアップ』をやろう

Makersの時代の象徴とも言えるのがKickstarterに代表されるクラウドファンディングだろう。ハードウェアの開発はとにかく金がかかる。それをプリオーダーによるファンディングでカバーするというのは非常に良いアイディアで、加えてユーザーたちにとっても『面白い製品のアーリーアダプターになれる』という非常に大きなメリットを含んでいた。近年ハードウェアにチャレンジする企業は減っていたが、これらクラウドファンディングの潮流からは察するに
「市場にはハードウェアを求める気運がブスブスくすぶっていた」
という重要なマーケティング情報がハッキリと顕在されたわけだ。
しかしこれらクラウドファンディングに頼った手法は使い方によっては単なる「スモールビジネスのサポート」でしかない。なお『スタートアップ』と『スモールビジネス』は大きな違いで、日本に馴染んだ表現で言えば『ベンチャー企業』と『中小企業』の違いがそのものズバリだ。180度違う。
スモールビジネスは資金繰りが自転車操業的になりかねない。半沢直樹は小説とドラマの中だけではないリアルな話だ。なぜそうなるか?理由は先行投資が得にくいからだ。スモールビジネスの大抵は自己資金=借金で立ち上げて、その後もほとんどの場合で、その資金に売り上げを乗せたり、借金を返したり、また借金をしたり、、、と永続的に運用していく。そういうシーンにおいてクラウドファンディングはまさしく救世主となる。
一方スタートアップは一億、二億を稼ぐことを目標にしたビジネスであってはいけない。数十億、数百億の利益を上げ、そこからさらに成長し続けるビジネスモデルを抱かなければいけないのだ、いや、言葉が違うな、そういうビッグドリームを描けないならスタートアップなんてやらない方が良いのだ。

つまりKickstarterをやって、製品の立ち上げができて、そこそこ儲かって、ハイ終わり。では継続性が全く無いのだ。当然そこで得た資金を元にして今度は次の製品を作るのだろう。しかしハードウェア関連製品の開発サイクルは長い。次の製品リリースはどんなに早くても半年後、普通に考えれば1、2年後になるだろう。
スタートアップは『成長し続ける企業』である。じゃあその1、2年の間はどうするのか?

ここで答えを書いてしまいたい。

この1、2年間を使って、サービスを育てるのだ。
言葉を勘違いしないで欲しい。サービスを『立ち上げる』のではなく『育てる』のだ。

ハードウェアは基本的に薄利である。例えば電化製品の類いは、販売店がだいたい30%-50%のマージンを取るのが普通である。そして製品原価は売値のだいたい30%。製品を出荷すると輸送コストもかかるし、国をまたげばそこで課税される。課税率は製品カテゴリや対象国によるがだいたい取引価格の5%-15%くらいだ。社内では当然人件費がかかっているし、場合によっては外部委託で費用もかさんでいるだろう。
さて、そういうことを考えた場合に果たして『開発した会社に残る利益』はいくらか?
ある程度ケースバイケースで幅があるものも大抵が製品価格の一桁%だ。
それでは仮に1万円の製品だったとして、数百億円の利益を出すために売らなければならない台数はおよそ1億台だ。5万円の製品だったとしたら数千万台、つまりiPhone, iPadレベルの台数売らなければならないのだ。

非現実感を感じて欲しい。

一方「ネットビジネスは当たればでかい」なんて数十年前のバブル用語のように聞こえるかもしれないが、まぁ善し悪しあれそれは未だに胸を張って語れる現然たる事実だ。理由は初期投資の低さと良い意味での不確定性が後押ししている。
初期投資の低さは言うまでもないが、継続的な投資額も当然低く済む。(PC2台と月々$600の家賃だけでやっていたスタートアップを知っている)先日Dropboxが「月額$9.99で1TBのクラウドストレージ(以前は同額で100GB)」という焦土作戦のごとく(笑)なサービスを開始したが、それもこれもコスト感覚の違いのおかげだ。彼らにとってはユーザー数の獲得が至上命題であって「1バイトあたり諸経費がいくらだから損益分岐点は、、、」なんて考えているのは果たして社内に何人いるのだろうか。きっと少数名はいるのだろうが、ここで言いたいことは、彼らにとってそれはメインの悩み事ではないということだ。
そして買収においても多くのケースで売り上げとは全く関係なく買収額が決まっていくように見える。例えばよく言われるのは「(ユーザー数)×(◯ドル)=(買収額)」という計算ロジックだ。なぜそのような一見あやふやな計算方法に至るのかというと、それはサービスが急成長し続けているような状況では将来の価値がどのくらいになるかが現在の売り上げや利益からは測れないからだ。なのでわかりやすい指標としてユーザー数やダウンロード数なんかが目安になる。当然現場ではもっと複雑なロジックや駆け引きが存在するのだろうがそんな情報は公開されないのでその点については知る由はない。

こんないかにも華々しい状況をハードウェアに関わって仕事をして来た人間たちは、歯ぎしりはしないにしても、「となりの庭は間違いなく青い!」くらいには思って見ていることだろう。正直色んな意味でサービスビジネスの方が自由度が高く、俊敏で、かつ益も多かったのだ。


ちなみに少々例外の話だが、Kickstarterやってハイ終わり、でも伸びる可能性のある唯一のパターンが『特許』だ。とはいえこれは資金調達や製品リリースとの明確な因果関係が定義しにくい領域なのでここでは話に含めない。発散してしまうので。

時代は傾きつつある。

そう信じるか?信じないか?それはあなた次第だ。ピースは既に与えられているし、それをどう組むかなんて人それぞれだから結論も人それぞれで構わない。
しかし、信じたひとは、信じれるひとだけ、ぜひ続きを読み進めてみて欲しい。



時代は回りました

バズワードなんて誰かがメディアを意識して策略的に作り出すものなわけで本質を表すことよりもキャッチーであること、理解し易く親しみ易く使い易いことが重要だ。したがって得てして物事の一側面のみを示していることが多い。IoTについても然りだ。

Internet of Things =「モノのインターネット化」

というのがベタな訳だろう。
「色んなものがインターネットにつながるようになりますよー」

、、、、ん?
これって以前にどこかで聞いたことがあるフレーズじゃないか?

そう。IPv6が策定された頃、みなこぞって言っていたセリフだ。

しかし実際はその後にやってきた時代は『スマホ全盛』の時代であり、「全てのモノはスマホに統合される」が新たな合い言葉となった。デジタルカメラ、ビデオカメラ、メディアプレーヤー、全て時代の餌食となっていった。そしてじきにPCも。

なぜIPv6のときにIoTの時代がこなかったか?
話はかれこれ10年ほど前。iPhoneもiPadも無ければiTunes StoreもApp Storeも無い。DropboxもEvernoteもSpotifyも無かったし、Facebookもようやく立ち上がった頃、Googleですらまだ上場していなかったような時代だ。
つまりインターネット上のソリューションが貧弱過ぎて「インターネットに繋ぐ?繋いでどうすんのさ?」という状態だったというわけだ。そりゃ流行らんわ。

しかし時代が変わった。スマホへの統合が一段落し、しかし代わり映えのないプラットフォームへの飽きも手助けをして、『専用機』という需要が新たに生まれるのではないかという仮説だ。それをして「今こそがIoTの時代」というような無責任なことを言い出すひともいる。

まぁそりゃいるだろう。状況はわかる。成功事例もいくつか見えてきた。

記憶に新しい範囲で非常にわかりやすい例がnestだろう。創業わずか数年、メインの製品はふたつだけだがGoogleに約3000億円で買収された。Youtubeの倍の金額だ。

nestの年間売り上げはおよそ300億円、先ほどの論理で考えれば年間の利益は高くても10億円程度だろう。つまり3000億円をペイできるような利益は絶対にnestの売り上げからは出ないのだ。

しかし買収は行われた。

その理由と戦略については色々な憶測とそれに基づくポストが氾濫しているからそちらを参照して欲しい。

ここで見落とされがちで、恐らく非常に厳密なチェックを必要とする極めて重要なポイントが「インターネットのソリューションを軸にしてハードウェアを企画開発する」というプロセスが確立され、キープされ、適確に運用されているか?だ。
nestは見事にそれを達成した。なのでその結果として『彼らの売り上げ額からは考えられないレベルの買収額を手にした』わけだ。これは先ほどの「なぜネットビジネスは当たるとでかいか?」の話に通じる。

しかしながらこのセリフっていろんなところで自分に跳ね返ってくる話なので非常に耳が痛い。でも痛いからって避けるわけにはいかない。本当にこれは重要なのだから。

プラットフォーム

ここで別の事例を挙げよう。bttnだ。
(目下indiegogoでキャンペーン中)

bttnはモノとしては単なるボタンだが、それがインターネットとシームレスに繋がることで様々なサービスのトリガとして機能する。例えばbttnでタクシーを呼んだり、bttnで誰かに向けてnotificationを出したり、、、そういや以前妻に「旦那呼び出し用Yoスイッチ」というのを作ったのだが「そんなの使わないよ」と一蹴された。笑
これは非常に可能性のある製品だと個人的には思っている。まさにIoTのキーワードにマッチした製品と言えるだろう。

しかし、

私自身はbttnが『大成功』をおさめるとは思っていない。
なぜなら物理ボタンとインターネットサービスをつなげるハブとしてIFTTTのプラットフォームを利用しているからだ。IFTTTは現在飛ぶ鳥を落とす勢い、急成長が期待されるサービスのひとつだ。それに便乗したのだ。
https://ifttt.com/
勢いがあるサービスに便乗して何が悪いのか?
考えてみよう。
将来的にbttnのコンセプトが市場に受け入れられたとする、そうしたら間違いなく『似たようなものをもっと安値で作る企業』が腐る程でてくるだろう。そのときbttnはどう戦うのか?

もうちょっと辛辣な言い方をすれば、

「サービスのプラットフォームを握っていない会社に、勝ち目なんてあるのか??」

価格競争に巻き込まれ、パクリの粗悪品との戦いに消耗し、仮になんとかかんとかシェアを数10%確保したとして売り上げはそこそこでも利益はカツカツ、、、それでハッピーだと言えるだろうか??

『プラットフォーム』というキーワードは企業の成長戦略において非常に重要だ。そして話は簡単ではない。

例えば「Facebookがどこかの企業を買収する」というシチュエーションについて考えてみた。Facebookの事業に関係ありそうな企業の例をいくつか想像してみよう。

A社:Facebookのプラットフォーム上でゲーム等を作っている企業
B社:FacebookのAPIを利用して独自のサービスや機能を提供している企業
C社:Facebookの代替となる可能性を秘めた独自プラットフォームを展開している企業

まずA社に対して食指が動くことはまずないだろう。よっぽど儲かっていたら話は別だが、A社のような企業は出ては潰れ、増えては減り、沸いては消え、そんな十把一絡げのうちのひとつだからだ。
B社については要検討だが、買収の可能性は低いだろう。彼らはプラットフォームを握っている企業にとっては『未来』を試行してくれている都合の良いパートナーだからだ。したがって彼らに対しての対応としては「もし有意義な関係が築けそうなら提携する」「もし良いサービスになりそうだったら自社でパクって彼らは潰す」の2択だろう。これはAppleがしょっちゅうやっていることだ。AppleはiOSというプラットフォームを作り、App Storeという遊び場を提供したことで非常に多くのサンプルを得ることに成功した。素人さん玄人さんたちがたくさんのアプリを作り、そしてその売り上げ経過を全てAppleは知ることができる立場にあるのだ。つまりプラットフォームの『あるべき未来』はAppleにとっては丸見えになったわけだ。そしていくつかの良さそうなアプリをピックアップしてそれらの機能を『Appleの次のデフォルト機能』として取り込んでいく。そして開発元は潰す。これは完全なパクリであり技術とアイディアの搾取に他ならないのだが、プラットフォームを提供している企業にとってはごく当たり前の行為として正当化されている。怖い話だ。(これを回避する唯一の手段が前述の『特許』だ。この場合はめでたく買収の可能性が見えるだろう)
そしてC社について、これは重要案件だ。是が非でも潰すか取り込むかしなければならない。そして多くの場合で潰すというのは非常に難しい。彼らが何かしらの先進性をもって自分たちよりも優位な立場にいるとしたら、それを抜き返すのは到底容易ではないからだ。良い例がWhatsAppInstagramだ。Facebookのアクティブユーザーが下降傾向にある中でユーザー数を伸ばす彼らはFacebookにとって脅威でしかない。彼ら勢いのある新興企業に比べてFacebookが明らかに優位である点、それは金だ。なので買収。選択の余地も無しだろう。

こう見るとC社だけに華々しい将来が待っている。
当然買収話を蹴って天下を取ることを狙ったって、それもまた楽しいに違いない。
ここでA, B社とC社の大きな違いは「独自でプラットフォームを展開したかどうか」だ。
それによって成長のストーリーが全くの別物になってくる。

当然、『夢物語』なのだ。
プラットフォームを握ることなんてそう簡単ではない。
ほとんどの会社が夢半ばで倒れていくことだろう。

だから諦めるか?そこそこで良しとしておくか?

さて、ここで前述の言葉に戻りたい。

”スタートアップは一億、二億を稼ぐことを目標にしたビジネスであってはいけない。数十億、数百億の利益を上げ、そこからさらに成長し続けるビジネスモデルを抱かなければいけないのだ、いや、言葉が違うな、そういうビッグドリームを描けないならスタートアップなんてやらない方が良いのだ。”

なお余談だがスタートアップが何たるかが非常にわかりやすい『お金の話』をしておきたい。当然ここで話すことはあくまで一例、一側面として受け取って欲しい。
スタートアップでよく用いられる言葉に「バーンレート」がある。”Burn Rate” つまりどのくらいのペースで『燃え尽きる』か。これは資金の話だ。具体的には大抵は「毎月どのくらいの金を使っているか」という意味で用いる。
典型的なスタートアップにおいてはシードステージではまだしも、シリーズA、シリーズBのファンディングをこなした後なら、仮に売り上げがまだゼロの状態だとしても『バーンレートは数千万円』ということも十分にあり得る。別に驚くには値しない。
なぜそんな状態になるか?答えは極めて単純だ。拍子抜けするぐらい単純だ。
なぜなら彼らは人員も機材も『ベスト』を費やし、スピードにおいてもクオリティにおいても『ベスト』を目指すからだ。
数十億、数百億の利益を生み出すことは並大抵ではない、ハッキリとした他社との差別化、優位性、特許、etc. 様々なものを短期間で積み上げる必要がある。それは非常に金も手間もかかることだし、当然妥協は可能だがそれをしたらスタートアップではなくなってしまう。と、ほとんどのスタートアップに関わる人はそう思っているはずだ。
なけなしの自己資金で立ち上げた会社でそんなことができるか?

銀行から一年間の運営資金として数億を借金することは可能か?
そこには明確な線引きが存在するが、いずれにせよ、これは社会インフラのサポートあってこそのものなのだ。

日本におけるスタートアップ発展のためにインフラ=エコシステムがどうあるべきかについては別の投稿で深く考察したのでそちらを参照して欲しい。

日本のスタートアップエコシステムの方向性について考えるおれは暇人か!?



ふたつのバズワード『Makers』と『IoT』の不整合

Makersに関連したもうひとつのキーワードが3D printingだろう。
3Dプリンター時代の技術は昔からあったが、それがとうとう一般に手の届く価格になったのだ。これは大きな革命だったし、それによって個人が自由に手軽に造形物を試作することが可能になった。

最近のポピュラーなハードウェアビジネスの立ち上げフローはこうだ。

①事業・製品アイディアがひらめく
②とりあえずブレッドボードで実験してみる
③回路図を書き基板を作ってみる。外装は3DプリンターでOK
④ビデオを撮る
⑤Kickstarterで資金調達する
⑥その資金を元手に金型を作り生産する

いわく「いやぁ、ハードウェアビジネスが立ち上げ易くなった。これは新時代の到来だ!」と。

確かに①〜④のプロセスは非常に速くなった。
3Dプリンタだけでなく、Arduinoなどの試作実験の効率化を助けるアイテムや、各種モジュールの低コスト化、モバイルバッテリー技術のコモディティ化など、様々な技術要素がまさに『この時代』へ向けて集結して来たかのように素晴らしく高められて来ている。
おそらく技術的に難易度の高いトライが無いプロジェクトならば1、2ヶ月で④までのステップは達成可能なのではないだろうか。これはさながらソフトウェアサービスのα版の立ち上げのようだ。(有名な話ではtumblrは着想から2週間で最初のローンチを行ったらしい。他にも似たような事例はよく聞く)

しかし、きちんと⑤と⑥について考えて欲しい。

ハードウェアビジネスを意識的に避けるひとにとって最も大きな懸念事項は『初期投資の高さ』だろう。
例えば「AppleはiPhone4を作る際に電波の特性を測るための専用施設を180億円投じて建設した」という記事をどこかで見たことがある。これはさすがに極端な例だが、測定設備、試作品とその廃棄、金型投資、そして人件費。ハードウェアは顧客の目の前に商品が並ぶまでに多くの出費が伴う。それは仮にかなり低価格で技術的トライが少なくシンプルな製品だったとしても億はなかなかくだらない。しかしそんなつまらない製品で億集めても仕方ないので、それなりに新規性・優位性があり技術的トライがあり、必然そこそこの値段がする製品だとしたら、、、やはり少なくとも3〜4億円は資金が無いとプロジェクトは順調には回らないだろう。
それを踏まえてKickstarterプロジェクトでの獲得額を見ると、3ミリオンダラー以上を獲得しているプロジェクトなんて数えるほどしか無いということがわかる。
https://www.kickstarter.com/discover/advanced?category_id=0&woe_id=0&sort=most_funded

つまりほとんどのプロジェクトは、クラウドファンディングでの獲得金額を『現状の資金への上乗せ』としていたり、クラウドファンディングそのものが『市場調査の一環』だったり、もしくは新たなインベストメントや買収話を引っ張ってくる上でのきっかけとしているだけだったりするのだ。(これはFacebookに買収されたOculusが好例)

したがって現実にはほとんどのケースにおいて『クラウドファンディングで獲得した現金は、あっても無くても話は大きくは変わらない』のだ。

この現象自体は厳然たる事実だし、何の問題もない。クラウドファンディングの意義が失われている!なんてこともない。なぜならそもそもクラウドファンディングは「まだ製品リリースに至っていない会社を応援して、その代わりに初期製品を手に入れようという」というモチベーションで成立しているわけだからその『応援』のアウトプットがどうなるかという話だけであって企業が一生懸命その応援に応えようとしていることには何ら変わりがないからだ。

ここで重要なのは
「ハードウェア商売がやりやすくなりましたなぁ」
→「アイディアがあるなら即立ち上げだ。Kickstarterがあるし」
→「ハードウェアスタートアップの時代がきた」
→「IoTキターーー!」
とはならない、ということだ。
そもそも3ステップ目に間違いがあってハードウェアスタートアップではなく、これらは多くの場合で『ハードウェアスモールビジネス』なのだ。

実践段階

IoTの定義に関するくだりで『サービス』うんぬんに触れた。そしてハードウェアビジネスの定義がシフトしていることについても指摘した。その上で『スタートアップ』として立つためには「資金はカツカツですがどうにか節約して製品作りました!継続的な売り上げ確保のために派生品をすぐ出さないと。。。」ではダメなのだ。
製品とともにサービスもリリースし、製品が一巡する頃にはサービスの基盤を固める。ユーザー数を十分に確保したところで売り上げを新規製品の開発に投じる、そんなサイクルになるのではないだろうか。

そのために必要なのは『短期間でサクッとハードウェアを作ること』ではなくて(確かにそれもある種のヘルプにはなるわけだけど)、もっと重視すべきはハードウェアとサービスの連携、そこから生まれる価値について(IoTの言葉の裏側にある本質について)時間をかけて熟孝し、その過程でいくつかのプロトタイプと仮説検証を行うことなのだ。
もう少し具体的にシチュエーションを想定するならば、仮に、『サービスの案はあれども立ち上げが間に合っていなくてハードウェアの試作品のみがある』という状態だったとする。

「Kickstarterやる?」否、そこはきちんと開発を遅らせるべきなのだ。

前述のとおりハードウェア開発のハードルは下がった。そのためハードウェアだけで勝負しようとしたらライバルの立場に立てば簡単にコピー製品を出して潰すことができるだろう。ユーザーに伝えたい本当の価値は伝わらず、くだらない粗悪品たちの中に素晴らしいプランが埋もれてしまうことになる。

サービスもしかり、テスト運用を重ねることで問題点が発見される。そしてインターネットサービスと結びついたプロダクトである場合、その発見された問題点は場合によってはハードウェアの開発へとフィードバックする必要があるかもしれない。
「まぁサービスはハードウェアができてから考えばいいっしょー」と緩い考えをしていると、もうこれからの時代の『あるべき製品開発プロセス』にはマッチしないのだ。
もう一歩具体的に言うならば、ハードウェアが無い段階でも平行してサービスについても仕様を考えておいて、ハードウェアのプロトができ上がる頃にはサービスのプロトも作っておいてローカルで運用テストをする。そして問題点をハードウェアにフィードバックして、かつ、ハードウェア側からもサービスへのリクエストを抽出していく。
こんな流れになる。

これは非常に重要なプロセスの変革だ。そして多くのひとが気付いてそうで十分に気付いてない。クチでは「わかってる」と言うけど実践してない。でもそこが分水嶺になることは明らかだ。ここではnest, bttnなどの例を挙げたが、探し出したらキリがない。

当然時代の流れなど皆わかっている。ここまで読んでも「んなこたお前に言われなくたってわかってんだよ!」と苛立を覚えたひともいたかもしれない。(いや、苛立を覚えた人はこんな下まで読んでないか。笑)
わかってはいる。
しかしどう実践して乗りこなすか、どのように自制するか、が極めて難しい。
ビジネスプランを立てるとき、きっとサービスの展開も色々と考えることだろう。妄想混じりでOKだ。発想を飛ばしてもはや世界が一面塗り変わるのすら感じるだろう。しかし、その妄想だけを抱えていざハードウェアまで作ってみて、「ヨシ、あの妄想を形にしよう!」などと考えても遅すぎる。間に合わない。

「とりあえずハード作ってみました。サービスは、えーと色々考えられると思います」は間違いなく短命で死ぬ。

じゃあどうするのか?シンプルな行動原理で言うなら、

「明確なサービスのプランが無いなら、ハードウェア開発は待った方がいい」
「サービスのプロトが納得いく品質まできていないようなら、ハードウェアをファイナライズするのは一旦見送った方が良い」

というくらいに、これからの商品開発は思考を入れ替えて取り組みべきだ。


毎度ながら私はここでこうやって文章をへちくりはちくり構築することで何かを提供しようとか世界を変えようとかそんなことは到底考えてはいない。
ペンよりもクチよりも『モノ』の方が強い。
そう思ってハードウェア仕事をやっているのでね。

だからこれはあくまで自分へのメモ。
忘れた頃の、テンパった時の道しるべとして残しておく。

もしどこかの誰かの琴線に触れるようなことがあったらそれは光栄だ。
そして機会があったら一緒に仕事やりましょう。笑