mixture-art@Q
技術+アイディア+世俗+なんとなく思ったこと、すべての融合がmixture-art
『半沢直樹』がウケる理由(テンポ、2面性、時勢)

最近やらなければならない考察のひとつ。

ドラマ『半沢直樹』が何故こんなにもウケているか?

先日8/11の放送で『前編』が終わり小休止となった今週は、そこかしこで同テーマの考察が見受けられる。
せっかくなので便乗させていただく。

かくいう筆者は先日の帰国で妻の実家に帰っている際に義理の妹から『オススメ情報』を聞き、
即4話までほぼ連続で観てしまった。

そして非常に納得している。
「こりゃウケるわ」
なので以下に否定的なことを書くつもりはないのでそのつもりで読んでいただきたい。
またドラマをまだ観ていない方にあらすじを説明をするつもりはないので、

その場合はぜひ、

とにもかくにもまずはレンタルビデオ屋へ走っていただきたいw


舞台は銀行恋愛要素無し
勧善懲悪権力との対決同期・同僚との熱い友情が物語のメインという、
割と古臭いと言っても差し支えない内容構成だ。

それが制作者当人たちの「視聴率は平均15%」という当初のターゲットをよそに、
常に20%越え、瞬間最高30%越えの快進撃を繰り返しているというのだから、
これまたドラマの内容と同じく痛快だ。

キャストもすこぶる良いとは言い難い。

主演は今をときめく堺雅人だが、対決相手となる役者陣は、、、
残念ながら名前を挙げるのが困難なくらいだ。(「脇役でよく見る人たち」という表現が適切)
香川照之が最終ボスと鎮座しているが、序盤での出番はさほど多くはない。
ポイントで上戸彩、檀蜜を使っているが、やはりそれだけの力で
ここまでのヒットになっているとは到底思えない。

そもそも檀蜜の演技は、、、ねぇ(^^;

つまりベタな脚本+売れっ子役者頼みの定番ドラマ体系とはほど遠いのだ。

それが何故こんなにもウケているのか?

3つのポイントを起点に考察してみたい。


< 偶然の産物(?)による結果としての展開の速さ >

そもそもこの半沢直樹の原作は以下の2冊の小説。
「下町ロケット」の池井戸潤の作品だ。

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

新品価格
¥690から
(2013/8/16 16:35時点)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)

新品価格
¥690から
(2013/8/16 16:34時点)

下町ロケット

新品価格
¥1,785から
(2013/8/16 17:09時点)

現在既に終わった1話から5話までが一冊目。
6話から10話までがおそらく二冊目の内容になるのだろう。

原作が存在する『残念なドラマ』によくあるのが
・日常シーンや役者を魅せつけるためのシーンが多くなり間延びする
・長編をはしょり過ぎて心理描写や説得力に欠ける
このどちらかだ。

『原作』というのは小説だったりマンガだったりするわけで、
したがって当然『全13話』が通常であるドラマなんぞに合わせて親切丁寧に書かれているわけがない。

したがって、

何話目に山場を持ってくるか?
一話ごとに最低ひと盛り上がりはさせるためにどのように話を分割するか?
原作のどの話まででドラマを完結とするか?

それらは脚本のさじ加減である。

さて、前述のとおり半沢直樹はさほどウケるとは思われていなかったので

2冊の小説原作を10話に凝縮させる

という盛り盛りの方針になったわけだ。
通常小説1冊を元に13話まで粘れるところをわずか10話に2冊の内容。

これが功を奏した。

『半沢直樹』を見れば分かると思うが、とにかく展開が速い
1話のいきなり冒頭から前置きもなく5億奪還の話が始まるし、
その後もストーリーと無関係な余計なシーンがほとんどない。
例えば4話くらいまで『半沢の息子』は名前は何度も出るものも画面には登場しない。
まるで家族団らんシーンは不要とばかりに。

これが物語にシンプルさを与えている。

登場人物というのは物語上の様々な役割を持って配置されているものだが、
まずそれがすぐにそれとわかるようになっている。
登場回数もセリフも持ち時間も少ないからだ。

悪いやつは悪役で悪いことするし、良いやつは良いことをする。
流されるやつは流されながらもいずれ良い方にいくことが丸見えで、そしてすぐにそうなる。

伝え方はストレートで、無駄なにらみ合いをダラダラ続けない。

そのため、時間を節約してみっちり楽しめた気分がする

視聴者にとってテレビはもはや圧倒的なメディアではなくなって久しい。
世の中には色々な選択肢があり、
テレビドラマなんてまったく皆目カケラも観なくたって十分楽しく生きていける。

エンターテイメントは世に溢れているのだ。

それでも『あえて』ドラマを見ることを視聴者に選択させるためには、
詰め込みまくって畳み掛けまくることが基本として必要なのではないだろうか。

『半沢直樹』はそれを実践した。たまたま。


< 主人公・半沢直樹の『>2面性』 >

さきほどキャラ付けがわかりやすいということを言ったが
ここで面白いことに

もっとも揺れているように見えるキャラが主人公の半沢直樹だ。

柔和で同期想い、同僚想いな一面

強く決意を固める芯の通った一面

そして、既に死に体の人間を容赦なく叩き潰す冷酷な一面

特に「倍返しだ」の決めセリフに象徴されるように
上記3番目の「冷酷」「怖い」「過激」な性質が最も視聴者を引きつけているように思う。

「おれたちバブル入行組」というタイトルの原作は読んではいないが、
果たしてバブル時代を行きてきた人間の中に、これだけの気骨と熱を持った人間がどれだけいるのだろうか?

全てが上手くいっていた時代から転落し、
転落を知っていながらもそこから這い上がるすべを持たず、
ただ流され、とはいえ安穏と暮らしている。。。

現実はそんなものなのではないだろうか?

つまり、半沢直樹には『願望』が溢れている。

しかもそれは「バブル世代サラリーマン」のでもないし、ましてや「銀行員」のそれでもない、

案外、「女性の」なんじゃないかなぁ、と思うのだ。

ようするに半沢直樹はリアルな範囲でカッコいいのだ。

スーパーヒーローでもなく、聖人君主でもなく、アイドルでもなく、
でも、目の前の旦那より、彼氏より、明確にカッコいいのだ。

これは堺雅人というスーパーイケメンではないキャスティング、
意図してか意図せずか常に男臭い(おっさんばかり)の画面上も功を奏したのだと思われる。


< 結構知らない銀行や会社のこと >

普通のひとは銀行のことなんて窓口で見えること以上はほとんど知らないし、
大抵のひとは会社と銀行の関係なんてものにもあまり興味がないだろう。

例えば『部署』というものは大抵『予算』で動いているが末端の人間にとっては
その予算というのは『上から降ってくるもの』であってそれ以上の詮索は考えにくい。

会社の会計報告などもきっとどこかで発表されたりドキュメントで渡されていたりするが、
そんなものは自分の給与明細に比べたらハナクソほどの興味もない。

しかし、これら『経営』の核とも言える部分、知ってみると案外面白い。

筆者が所属している会社は小さいところだが銀行の融資は受けていない。
『投資』でまかなわれているのだ。これはまた融資とはひと味違う。
とはいえなるほどやっていることやそのときの懸念、予想される展開など共感できる部分は非常に多い。

これはドラマだけでなく小説でもマンガでも言えることだが
「民衆が興味を持っているもの」をテーマに上げ
それの解説的な要素を含む作品をリリースするとやはりヒットし易い。まぁ当たり前のことだ。

知的欲求というのは人間が永遠に捨てることのない重要な欲求だし、
しかもそれが「潜在的に興味を持っているもの」だとしたらそりゃあもう大ヒット間違いなしだ。

そして『潜在的ニーズ』を探る鍵というのは一般に『時勢』である。

ではその『時勢』について。

現在日本は国をあげて経済再生に立ち向かわなければならない局面であるが
それを現実にするためには大企業の努力だけでは足りない。

むしろ小さな企業の努力だけが経済復興の起爆剤となりうる。

というのは国も理解していて、中小企業に対する助成金が活発になっていると聞く。

が、規模としてはいかがなものか。

そもそも日本には文化的に『投資』というものが染み付いていない。
アメリカでは個人が会社や個人に対して投資することが決して珍しくない。
他にもローンで家を買ってそれを貸すことで

 (家賃収入)ー(ローンの支払い)=(利益)

という構図で収入に上乗せしていたり、皆お金を儲けることについて真剣に考えている。

資本主義の筋金の入り方が違うのだ。

対する日本ではほとんどの一般人が「サラリーのみ」で暮らしている。
副業を抱えているひとはわずかのように思う。
日本では副業を禁止している企業も多いし、そもそも長年そのような発想が広まっていないからだろう。

だがそんな日本人でもお金は欲しい、で、先物やFXに手を出してなけなしの貯蓄を失うのだ。
そんなくだらないことするくらいなら、
しっかりと計画的に資産運用して月々の副収入を得る方がどんだけ賢いことか。。。

さて、少々話が脱線したが、日本経済のほとんどの部分は銀行による『融資』という形で動かされている。
だから実際に融資を引き上げられて半沢父のようにクビをくくるひとは少なからずいるんだろうし、
それ自体は資本主義が故の宿命なので避けて通れないし避けて通る必要もない。単なる現実だ。

そして、日本においては銀行が力を持っていて経済を動かしているというのも単なる現実だ。

「銀行」「融資」「債券」「経営」「特許」「頭金」「試算」「帳簿」「倒産」
そんな単語がドラマで飛び交うのも、悪くない。求められていることだったのかもしれない。



さて、半沢直樹はスペシャルとか引き延ばしはなく、通常よりも短い全10話で終わることが決定的なわけだが
(TBS延長交渉に失敗との報道。堺雅人はすぐに「リーガルハイ2」のロケに入るのだそうな)

リーガル・ハイ DVD-BOX

新品価格
¥16,613から
(2013/8/16 17:07時点)

それも良いかもしれない。

来週からの後半もビシッと濃度を濃く、簡潔にテンポ良く、
倍返しが10倍返しから100倍返しくらいまでなったところでしっかり有終を飾って欲しい。

そして一旦時間を置いて『半沢直樹2』に続く。それが現状ではベストの展開だ。期待しよう。


Tags: